プロローグ:祝されぬ生に乾杯
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「生まれたよ!元気な男の子だ」
紫色の髪を結った女性の胎内から取り出された赤子は、本能のままに鳴き声を上げ、真っ赤な髪の女に抱き上げられた。
「その子の顔を、良く見せて」
疲れ果てた女性が息を荒げたままに問いかけると、赤髪の女は赤子を女性の見える位置へ抱き上げた。

「ああ、なんて不細工ちゃん…」
嬉しそうに微笑み、女性は女から赤子を受け取り、抱き寄せる。
「先生の言う通りになったわね、モネ」
「・・・・そうだね」
「此処からは貴方の役目よ。・・・・・この子を、ラベンダーを宜しくね」
「分かってるよ」

モネと呼ばれた赤髪の女は、赤子を託され、そのまま部屋をあとにする。

残された女性が指を鳴らすと、ポンポンと部屋は片付き、しまいには服までも新しい物に変わった。
先程まで子を産んでいたとは思えぬ程、部屋も女性も綺麗に整頓された。

「私の役目は此処でオシマイ」

その女性の言葉に、ぐにゃりと部屋が曲がり、女性はゆっくり闇に飲まれて…。

「でも、ほんの少しだけ、成長したあなたを見たかったわ、ラベンダー」




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